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「ピアノマンの激情」
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川上タカユキという人は、普段は非常に礼儀正しい人だ。ピアノを弾くというのがそもそもジェントルな感じで、荒くれロックギタリストとはまたちょっと違う雰囲気を醸し出していたとしても何の不思議もない。(もちろん、荒くれロックギタリストが悪いということではありませんよ)その常識の範囲で、川上タカユキはとても礼儀正しい人だ。
だが、そんな川上タカユキがひとたびステージに上がったら、雰囲気は一変するのだ。ピアノを弾く人は普通椅子に座って静かに弾く。静かではない人であっても椅子には座っている。キーボーディストならスタンドの高さを調節して立って弾く人も稀にいる。だが、ピアノの高さはそんなに大幅に調節することは出来ない。そして、座って弾くことを前提に作られている楽器である。だから、彼がピアノを弾く姿というものはかなり異形で、初めて見ると一種のカルチャーショックを覚えたりする。
実は、激しい人なのだ。川上タカユキは激しい人なのだ。心の中に秘めている激しい感情と、表面的にジェントルな態度の狭間で凝縮された内面が、音楽となった時に溢れてくる。それが彼の音楽の本質だといっても過言ではないだろう。
ライブは立って弾くから、見た目にも普通じゃない世界が目の前に光景となって示される。なので、判りやすい。だがそれがCDとなった時には、ともすればその激しさは隠れてしまいがちだ。実際このアルバムに収録された10曲はアップテンポな曲もあるが、全体を通してミドルテンポからスローなバラード中心といってもいいだろう。だから簡単にBGMとして流した時にはその激情に気付かずに過ぎることもあるかもしれない。音楽に慣れてない人もそうやって聴き過ごすかもしれない。だが、僕らが真正面から彼の音楽に対峙した時、彼が持つ激しい感情を垣間見ることができる。
で、実はこれが大切なことなのだと僕は思うのだ。冒頭にもカッコ付きで書いたように、荒くれな音楽が悪いというわけではないが、特に若いロックバンドの音楽には、音さえ大きくすれば激しいと勘違いしているかのようなものが少なくない。だが本当は静かな中に秘められた強い力こそが人の心を動かすのであり、そういうことを、その事実を、若い無軌道なバンドマンにはこのアルバムを聴いて理解して欲しいなと思ったりした。もちろん、そんな若いバンドマンたちだけに推賞するのではない。彼の静かで激しい情熱の迸りを、落ち着けるBGMをお探しの方から新しい男性ボーカリストをお探しの方まで、幅広く聴いてもらいたい1枚なのである。
キラキラレコード、大島栄二
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