アーチスト
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DESTROY



アーチスト:SEXFACTOR BEAUTY EXPLOSION
品番:KRCL-126 税抜定価:2400円 発売日:2008.12.21
ジャンル:エレクトロ/ロック

曲目
01.
02.
03.
04.
05.

Downers
Lowers
Starlight
Ironwork
Trick

06.
07.
08.
09.
10.

Radical Song
Rebel
Psychedelic Love
Trend Trip Morning
Run Run Run

   
解説

「クラッシュする意識」
  〜洪水の中での幸福な体験〜

 キラキラレコードの中では極めて珍しいジャンルの音楽だといえる。聴いた人は「あれ、キラキラってこんな音楽理解しているのか?」と言うかも私れない。だが決して僕の中にない音楽なのではない。むしろ背骨に一本通った部分にある、僕個人の中でのメインストリームだといっても過言ではないのだ。
 僕がキラキラレコードを設立する前にビクターレコードに勤めていたのだが、入社時にブレイクしていたアーチストはなんといってもBUCK-TICKだった。当時のBUCK-TICKは髪を立てたルックスが衝撃的なバンドで、華麗で流麗なメロディーとエッヂの効いたギターサウンドが魅力だった。デビュー当時からブレイクに至るまでにはやはりいわゆる「売れ線」といわれる楽曲を発表してきた。彼らのルックスだけではブレイクには至らない。やはりそのメロディによって、親しみやすい歌モノである必要があった。そのハードルを普通に超え、彼らはブレイクしたアーチストの地位を勝ち得た。
 その後BUCK-TICKのサウンドは変容を遂げていく。カリスマギタリスト今井寿を中心としたマニアックな音創り。当時注目を浴び始めていたコンピュータサウンドと、今井の特異なギタープレイの融合。ある種のバッティングで、けっして融合することなど有り得ない音同士を、彼らは必死で融合させようとした結果、いわゆる歌モノという世界からは乖離していく。1枚のアルバムのために1000時間のレコーディングが行なわれたというが、その作業に着いて行けなくなったファンも多かったに違いない。
 しかし、当時の僕は思ったのだ。もちろん部署が違うからレコーディングの傍に付き添ったわけではないけれども、メンバーとも接する機会なども多少なりともあり、一般のファンよりは近い位置から見ていて、音楽への誠実さというのはそういう姿勢の中にこそあるという印象を強く持ったのである。
 これは誤解を与えかねない発言だと思うので敢えて断っておきたいのだが、ファンの求めるものを無視していいということではまったくないのである。ファンを無視すると、それは独善だ。しかし、ファンにもいろいろな種類がいる。ファンを無視して良いわけではないが、逆にすべてのファンに認めてもらうことも不可能なことだ。当時のBUCK-TICKは武道館ライブのチケットがなかなか取れないという規模だった。そういうファンたちが期待することは彼らにしか出来ない音楽だったし、その辺にいるバンドブームに乗っただけのバンドとは一線を画した活動だったわけで、そういう状況においては、マニアックに道を極めようとする姿そのものが価値だった。もちろん売れ線ポップロックを期待した人たちはガッカリしただろう。だが、じゃあ彼らが売れ線を追求したとしたら、そういう姿勢にガッカリする人たちも相当数いたはずで、ビジネス的に見てどちらがファンをロスしたのだろうかと考えるとポップロック追求の場合の方がファンは減っただろうし、なにより、メンバー自身のモチベーションが続かなかったはずである。

 話がBUCK-TICK論になっているようだから、戻したいのだが、SFBXの音楽は僕の中ではBUCK-TICKなのである。しかも後期のマニアックに向かっていった時代のもの。もちろん時代が変化しているわけで、音的にはBUCK-TICKのそれとはまったく違っているし、当然のことながら彼らはBUCK-TICKに憧れて真似をしているようなものではまったくない。僕の中で印象が被っているのは、要するに音を目指そうとする姿勢の在り方とか、そういうものが重なっているからなのである。
 彼らは音楽活動を続けてかなりの年月が経過している。推測にすぎないかもしれないが、その仮定でいろいろなことがあったのだろうし、制作の過程でいろいろなコミュニケーションをする中で、彼らの個性やこだわり方、主張の強さなどを感じてきた。音楽を愛し、理想形をはっきり持っていれば、メンバーといえども意見のぶつかりは避けられない。そういう意味では彼らの音楽活動はかなり波乱万丈だったのではないかと思う。しかし妥協で生み出される音には柱がないことが多く、だからこそ、主張はぶつかりあうべきなのである。たとえそれで空中分解を起こす危険性を孕んでいたとしてもだ。
 そうして今に至るSFBXは、完全なバンドという形態を維持していない。だがそれは純粋音楽を求めるが故の結果なんだろうと思う。ステージング上の見栄えが完全ではなくとも、生み出される音は完全を目指すことができる最小ユニットとしてのSFBXがここにあるのだと思う。彼らは試行錯誤を繰り返しながら、もっとも有効な意識の発信を可能にさせようとしているのだろうと感じる。
 このアルバムは、実はいろいろなテイストの楽曲がちりばめられている。彼らの中での試行錯誤が純粋に音楽に向けられている結果なのだろう。そのどれもがきらびやかな音とワイルドな音が複雑に絡み合って成立しているという点で共通している。聴く者は音の洪水の中に身を浸すことになるだろう。単なる歌モノを予測していると驚愕する。だが彼らの音が純粋な音楽を追求している結果なのだということを理解さえすれば、その洪水の中に身を浸すことが、危険な行為などではなく、落ち着ける幸福な場所を探究する試みであるということに気付くはずである。


キラキラレコード、大島栄二